毎年マーマレードを作ることにしている。
マーマレード作りをこなすごとに、年々自分がイギリスに馴染んでいる気がする。日本にいた頃は保存食作りなどしたことがなかったからであり、橙のような柑橘のセヴィルオレンジが出回る頃になると八百屋などで、いつ入るの?とそわそわする買い物客をちらほら見かけるからだと思う。
ここに住むからこそ目の当たりにする、季節の光景。
マーマレードというのは基本的に柑橘系の果物を砂糖と煮込んだものだと認識しているけれど、玉葱のマーマレードというのも見かける。そしてものによってはなかなか美味しい。だけれど台所にこもって柑橘をコトコト煮込むときの香り、玉葱では味わえまい。
なので私は例年通り、普通のマーマレードを、セヴィルオレンジで作ろう。
作ろう、、、と思っていた。思っていたけれど、ある日マラケシュレモンが手に入ってしまった。丸っこくて、でべそが可愛らしい、小さめのレモンだ。これをマーマレードにしない手はないではないか。いつもはシングルモルトウィスキーを加えるけれど、今年はジンを使おうと決めた。
実はベルガモットレモンとして売られていたのだけれど、アールグレイに使われるベルガモットオレンジではなく、別の種類のもので、調べてみるとマラケシュレモンと呼ばれるモロッコ産のスイートレモンだということがわかった。でもそんなことはどうでもよくなってしまうほど芳しい。本当にアールグレイを彷彿とさせる香りがする。一つだけサラダに皮も汁も使ってみたが、花のようなレモンの香りがして、その特別感に酔いしれてクラクラした。本家ベルガモットは何年か前に一度だけヒップな八百屋で見かけたことがあるが、それ以来幻の存在である。
今年もマーマレードができた。マラケシュレモンとジンのマーマレードだ。
お世話になっている人にあげたり送ったりしているうちに我が家の分は二瓶だけになってしまった。だけどおすそ分けって素敵な習慣。するのもされるのも、嬉しいものだなと思う。
来年はもっとたくさん作らなくちゃ。

