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2013年2月24日

ふるさと

『そうにゃよか』というのは熊本の方言でとてもいいという意味だ。
大好きな熊本弁のひとつ。といっても口にするのは年配者以上で、若い人はあまり使わないだろう。とてもの熊本弁には『たいぎゃ』という言葉もあり、どちらかというとそちらを使うのではないかと思う。
当の私はというと、たいぎゃを変形させて『たーいな』だとか『たいが』と言うことが多い。とはいえ普段方言で話すことはあまりない。

若い頃は自分の生まれ育った土地やバックグラウンドをないがしろにしたり、しがらみを面倒に思ったりしたこともあったけれど、年齢を重ねるにつれ見慣れた古旦那に改めて恋する古女房みたいに熊本の良さを再認識するようになった。阿蘇や天草の観光地はもちろんのこと、三角にある小さな浜だとか、芦北にある誰にも教えたくない場所だとか、八代にある喫茶店だとか、地元のパン屋さんなど、外国人にでもなったつもりで見渡すと、よいところがたくさんあった。九州にしてもそうだ。
あちらにもこちらにも行ってみたいところがあり、あの南のアイランドを離れたくないという気持が強くなっていた。そんなおりに移住が決まった。

ちょっくら行ってきます、くらいの気持でイギリスにやってきた。

思いもかけないほど文化の違いが堪えた。

故郷は遠きにありて思ふものですか、室生さん?
でも私、故郷にいて満足してる時に来ちゃったものだからなんだかちょくちょく後ろ髪引かれるんです。

そんなわけで、今の私はスコットランド人の血を誇りにしているイギリス人みたいに、肥後っ子であることを大切にしている日本人だ。

2013年2月18日

そうにゃ、よか

ーそんせぇたぁな、そうにゃよかね。よう似合っとりますばい。ーー

と言っていた祖母の口調を思い出すことが最近よくある。
子供のようなところもあった祖母だけど、孫全員を無条件に可愛がる愛情深い人だった。そうにゃよかね、と褒めてくれることも多かった。
根っからのお百姓でずっと土まみれで働いてきたせいか、社交の場は得意ではなかった。でも今は老人ホームにいてなんとか茶飲み友達もつくって穏やかに過ごしているらしい。
ちょっとボケたかなって日も、あるらしい。

ばあちゃん、これからも長生きしてねと思う。

祖母への思慕とも相まって、そのセーターすごくいいね、よく似合ってますよ、という意味の肥後の表現がひしひし愛しい。