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2013年5月19日

何もない日曜日


「にちようの朝、妻はいつものごとくお気に入りの教会で礼拝中。」

と夫がからかうように言いながら階段を降りてくる。

たいていの日曜日においてチャンネル4系列のMore4ではジェイミー・オリバーというシェフの番組を放映している。たまに例外もあるけれど、いつも30分番組である30-Minute Mealsまたは15-Minute Mealsをだいたい4本から6本くらいいっきょに放映するのだ。

番組について簡単に説明すると、進行スタイルは、スタジオ内かもしくはどこかにセットアップされたキッチンで何品か作るというNHKの『きょうの料理』でときどきやっていたような『20分で晩ごはん』のようなものだ。
だけど『20分で晩ごはん』が本当にその時間内で料理家さんたちが献立通りのものを作ってゆくのに対して、ジェイミーの番組はうまく編集してそれらしく見せてあるものの、本当にその時間内で作りきっているわけではない。番組のポイントは、本当にその時間内にぜいぜい言いながら3コースミールを完成させることじゃない。同タイトルのレシピ本にある3、4品(30-Minuteの場合)をどういう手順でやればタイミングよく作りあげることができるかジェイミーが実際にカメラの前で作ってみせることにある。ここがミソだ。実際の収録はもっともっとかかっているかもしれないのだ。いやそうに違いない。そして普通の人が45分や1時間かかって作っても全然不思議ではない。私はその本からまったく同じメニューの、ある3コースディナーを作ったが洗い物をしながらやったから2時間くらいかかった。
ともかく、それゆえ『20分で晩ごはん』では料理家さんが本気で息切れしたりしているが、ジェイミーの番組では彼がすべては準備万端だよといったふうにゆったりとかまえ、ジョークを交えつつカメラに向かってお茶目な表情を見せたりしながら慣れた包丁さばきと手際で次々に素晴らしい料理をこしらえ、アンティークやヴィンテージの素敵な器やラスティックな木のボードにさりげなく大胆にかつおしゃれに盛り付けていく。
イギリスの多くの人気料理番組がそうであるように、目の保養なのだ。そしてまったりと過ごす時間にぴったりの娯楽なのだ。だから初回の放映から2年半にもなるというのに休みなく再放映され続けられているのだと思う。

何も予定のない日曜日、私はよくトーストとコーヒーを手に、もしくはブランチを食べながら、テレビの前の肘掛け椅子に丸くなって座る。そしてこのトーク上手のシェフが目から鱗のコツを実にあっさりと披露しながらトントントンとリズミカルに野菜を刻んだり、ワシッと大量のバジルを鉢植えからむしったり、オリーブウッドのプラターにおいたチャバタのステーキサンドイッチにサクッとナイフをつきたてたりするのを感嘆の思いで眺める。キッチンでは夫が二杯目のコーヒーか紅茶を淹れながら、彼の父と電話で毎週末お決まりの近況報告をしあっている。時折、「妻かい?彼女なら元気さ、いつものようにジェイミー・オリバーの番組を見ているよ」などと実況中継を交えながら。